500系新幹線は、1月13日を以て定期運用を離脱。7月の臨時列車の運行を以て完全に引退する。
ここで500系新幹線。500系のぞみについて、私が鉄道に…私が新幹線により深く興味、関心を持つけっかけとなった、思い出深い新幹線であるので、ぜひこの場で語らせていただきたい。
思い出深いと言っても、300キロを出す500系のぞみに関しては1度しか乗ったことが無く、電車でgoや図鑑、雑誌などで永遠と憧れていただけに過ぎない。
だが当時の私…いや今の私のとっても新幹線といえば「500系のぞみ」の事を指しているくらいインパクトがある事は間違いがない。

※ここでは16両編成の”500系W編成”の事を「500系のぞみ」、8両編成の”500系V編成”のことを「500系こだま」と原則呼称する。
300キロ新幹線というアイデンティティ

私がはっきりと、電車に興味があるという自覚を持ち始めた幼稚園生ぐらいの頃、PS2の「電車でGO!新幹線 山陽新幹線編」にハマっていた。
その中で500系のぞみは目玉となっていた。もちろん見た目のカッコよさもあるが、唯一300km/hで運転できる新幹線である事が売りであったように見受けられた。おそらく実際そうであろう…
ゲームに出てきた路線以外に、長野新幹線E2系など、様々な新幹線がある事を図鑑や、出張で新幹線乗りまくってる父の話を通じて知っていた。
他社系統のE1系やE4系Maxや400系つばさ、E3系こまちなど東日本の新幹線もかなり個性的であったのは、知識よりも直感タイプの子供の頃の私でも十分感じていた。
それでも500系のぞみが一番であった。500系のぞみこそ正義であった。500系のぞみこそ新幹線であった。新幹線=500系のぞみであった。
500系が1997年にデビューして以来、2007年に置き換え用のN700系が登場するまで、唯一の300キロ新幹線であった。
300キロ新幹線・史上最速という、唯一無二のアイデンティティというスペックに私は取り憑かれるように惹かれたのだ。
子どもはとにかく速いのが好き。かけっこだって、一番速いのがかっこいいのである!
一部飛躍している理論に見受けられるかもだが、その理論で500系のぞみはとにかく史上最速なので一番かっこいい!スピードスター!スーパーヒーローなのである。
正直、2026年基準で考えれば、2階建てで個室がある100系グランドひかりや、コンパートメントがある700系ひかりレールスターの方が個性があるという見方もできるが、そんなのはどうだっていい!
高速鉄道にとっても、ガキンチョにとっても、スピードこそ正義である。
だから当時最も速かった500系のぞみはかっこよかった!憧れの新幹線の中でも最も花形であった。

今になれば300キロ新幹線は、業界全体で見ても、出せる区間と出せる車両が限られるとはいえ、特別なものではなくなった。
2007年にデビューしたN700系。2011年デビューのE5系。その後続けてE6系。近年デビューしたE8系と300キロ出すのが当たり前になってきたのである。
E5系とE6系に至っては300キロを超えて、320キロも出す。
500系の速度を超える、その衝撃は大きいが、2桁目の数字が大きくなっただけで、3桁目の数字が大きくなるのと比べるとやはりインパクトが薄い。
私が小学2年生の讃岐旅行の帰り、最初で最後の500系のぞみの乗車をした時、山陽区間で300キロを出すと、電光掲示板で「300km/hで走行中」と表示していたのをなんとなくであるが覚えている。
今思えば300キロ出すのが当たり前で無かったことを象徴するようなものだと感じている。
段々と屁理屈っぽくなってきたので、ここでまとめると…
幼稚園生で電車に興味を持ち始めた当時、新幹線と言えば真っ先に500系のぞみが思い浮かんだ。
理由はただ単純!唯一の300キロ新幹線であるからだ!史上最速であるからだ!
もちろん単純比較できないが、500系より多くの面で優れた新幹線は多数ある。
それであっても私にとって新幹線といえば「500系のぞみ」の事を指す。
300キロ出すためのデザイン

500系と言えば他の新幹線とは一線を画すデザイン。
航空機のような円筒断面、15mに及ぶ超ロングノーズで、誇張表現かも知れないが、他の新幹線とは何から何まで異なる。
0系や100系が旅客機のデザインと例えるならば、500系のぞみは戦闘機のデザインと言っても差し支えない。
300キロ出すためのデザインとはこういう事かと、電車でGOで500系のぞみばっか運転していた当時、そう思っていた。
実際は、この形状にしなくても要求性能は満たせるとの事だったが、そんなのはどうでもいい!
スピードを出すのに特化したデザインというだけで、男心をくすぐるロマンなのだから。

小学2年生の頃、初めて500系新幹線乗った時も、ちょっと狭いけど丸くて行きに乗った飛行機みたいな空間である事も薄っすらであるが、そう感じたのを覚えている。
また速度とは関係ないが、塗装に関しても、500系のぞみは違う印象を持つ。
東日本には400系つばさ等の例外は多数あるものの、他の新幹線は白、クリーム系色をベースとしているところ、500系のぞみは青と黒を基調とし、鋭い色使いをしている。
車内内装デザインも、車両デザインに合わせるかのように、紫色の座席モケット、紫系の壁面でシャープな印象を与える。
これも電車でGOに入っている車両紹介ビデオで、500系のぞみだけ違うなと子どもながら感じたところである。
500系のぞみの特徴といえば、他の車両にはない、T字型のパンタグラフ。形式名は「WPS204形」である。
フクロウの羽根からヒントを得て、側面にギザギザを設け、空気抵抗を減らし騒音を低減している事が一部知られている。
相鉄沿線に住んでいる私は、相鉄の車両によってパンタグラフが混在しているのが面白く、パンタグラフの形状に興味があった。
昔のパンタグラフは菱形で「◇」の形状。新しいパンタグラフは、シングルアームパンタグラフは「>」の形状なのは、子供ながら知っており、なんとなくであるが(編成内の混在具合を)観察していた。
だが500系のぞみは、横から見ると「|」。前から見ると「T」の形状をしており、これはアイデンティティの一つである。
このT字型のパンタグラフには、衝撃を受けた。
史上最速を目指すとは、ここまでの工夫が必要なのだと感じ、これぞまさにスピードを追い求めたロマンだ。
ここで500系のぞみに関して、思っている事をまとめる。

15mのロングノーズ・飛行機のような円形断面の車体・青と黒をベースとした塗装・T字型パンタグラフ(WPS204)で、まさに弾丸のように空気を切り裂くデザインであるように思う。
新幹線は、元々戦前に計画されていた弾丸列車がルーツである。また、海外の方は日本の新幹線の事をを「bullet train(弾丸列車)」と呼ぶ。
あくまで個人の感性で話しているものであるが、0系などの他の新幹線電車は「超特急(super express)」という見た目だが、500系に関しては正真正銘「弾丸列車(bullet train)」と言っても過言ではないと思う…
憧れに磨きがかかる知識

500系のぞみ(W編成)の特徴は、速度種別がU49(上り10‰上での均衡速度が349km/h)である事。
ちなみにN700系はU43(上り10‰上での均衡速度が343km/h)である。速度種別U49という記録は破られていない。
私にとっての最強の新幹線500系のぞみは、まだ最速なのだと、ここで思い出に磨きがかかる。
500系のぞみは1997年当時、ギネス世界記録を2つ樹立している。
それが「隣接2停車駅間の平均速度」と「運転区間全体の表定速度」だ。
隣接2停車駅間の平均速度は、広島~小倉(実キロ192.0km)間を44分で結び、平均261.8km/h叩き出している。
2026年3月改正現在の同区間最速は、みずほ603号で同区間を45分で結ぶ。秒単位まではわからないので正確な算出はできないが、平均速度は256km/hだ。
運転区間全体の表定速度は、1997年当時の山陽区間のみを走るのぞみ503号で、新大阪~博多間の表定速度は、242.5km/hを出している。
2026年3月改正現在、日本の表定速度最速は臨時運行の、のぞみ547号新横浜~博多間で、238.9km/hである。最高速度が285km/hに抑えられる東海道新幹線区間も含み、山陽区間の停車駅も500系が居た時代より増加しているため及ばない。
定期列車では、東北新幹線はやぶさ6号盛岡~東京間で、229.1km/hである。はやぶさは日本最速の320km/hを出す。
しかしこちらは大宮以南の速度が130km/hに抑えられている事やダイヤが過密である事がおそらく影響しているのか、500系のぞみ503号には及ばないようだ。

こういう風に散々語って申し訳ないが、はっきり申し上げると、電車でGO!ばっか運転していたガキンチョにとって、平均速度や表定速度は何なのかわからなかった。
ギネス世界記録に乗ったのは、お客さんを乗せる電車の中で、最高時速が世界一速い事だと勘違いしていた程だ。(営業最高速度は、実際には当時のTGVと並んで1位タイである)
しかし500系のぞみが、世界最速の名を奪還したこと、ギネス世界記録をたたき出したこと、そして時速300キロの壁を破った事は、当時の電車好きのガキンチョにとって英雄であり、日本の誇りであった事には変わりない。
そして、大人になった今もそれは変わらないのである。
こうやって簡単に振り返ってみて感じた。
2026年現在も、500系のぞみが記録した足跡は、日本国内においては破られることなく、はっきりと残っている事に改めて感動している。
まさしく500系のぞみは、俺たちにとっての英雄だ。
「500系こだま」になっても輝くオーラ

2007年より後継のN700系に順次置き換えられ、2010年2月28日の運行を以て、のぞみ運用を撤退した500系。
16両編成から8両編成に短縮。アイデンティティの一つであるT字型パンタグラフ「WPS204」の換装。最高速度を300キロから285キロへの引き下げにより、こだま専属(臨時代走等でひかり・のぞみ充当あり)となり、500系のオーラは大きく失われたように思えた。
だが実際には、こだまという脇役に於いても、オーラは輝いていた。
正直こだまは、のぞみ・2011年からはみずほ、さくらと違って目立たぬ存在であろう。
特に速いものが正義の子供には、こだまは注目されない存在と言えるかもしれない…

500系のぞみは、スピードを追い求めたロマン極めたマシンだ。時速300キロというアイデンティティが失われたところで、オーラは大きくは損なわれず輝き続けた。
他の新幹線にはない弾丸のような先頭形状、青と黒を基調とした配色で、近未来的なデザインとして通用している事もあるのであろう。
何より300キロの壁を打ち破った英雄と言う事は、まるで伝承の如く、親から子へと語り継がれているのであろうか…

最後の余生としてひっそりと生きるような存在とも言える「山陽こだま」
そんな「山陽こだま」に500系は、20年弱も彩りを添えたとも言えよう。
数十年経った今でも、衰えぬカッコよさから、プラレールカー・500 TYPE EVA・ハローキティ新幹線として、V2編成は運用離脱まで晴れの舞台を与えられた。
V2のコラボに関しては、賛否両論はあるかもしれないが、デビューから引退まで「世界一の新幹線」として、500系は愛され続けた存在である事は否定はできないであろう。
また引退に先立ち、V7編成・V8編成には「Thank you」ステッカーが貼られている。
個人的には、ステッカー無しの方が好みではあるが、花道を飾ろうとしているのが伝わる。
500系の魂を受け継ぐ「後継車」たち

500系のぞみは、日本の新幹線史上初めて、300キロの壁を打ち破り、史上最速を10年間守り続けた。
そして、500系も引退が迫ってきた。そこで500系のぞみの魂は、後継の新幹線に受け継がれている事を改めて再認識するときが来たのであると感じる。
東海道・山陽新幹線の主力であるN700系。500系が追い求めた速達性、700系が追い求めた快適性。
その要素を合わせ、ブラッシュアップしたまさに完成度の高い車両と言える。
特に300キロ新幹線をより身近な存在にしたという点では、500系の魂を正当に受け継いだ車両として、500系の良き後継車らしい功績だと思う。

東北新幹線の主力になったE5系新幹線。500系・N700系の300キロを上回る320キロで走る。E5系と連結して走るE6系新幹線も同様だ。
500系では、航空機との競争力を高めスピードアップを図った。E5系も同様で2012年の改正から史上最速の320キロでの運行を開始した。
またE5系では、飛行機の「ファーストクラス」を意識したグリーン車より上の座席種別「グランクラス」を初めて連結した。
500系のコンセプトである対航空機を、サービス面にも拡大した存在とも言えよう…
500系が目指した速度を20km/hも上回るという点も、サービスの向上という点も、500系が残した功績がさらに発展したものだと思える。
このように500系が残した設計思想や足跡は、後の新幹線にブラッシュアップされながら引き継がれている。
新横浜が近い私は、東海道新幹線に乗る事が多いので、N700系・その後継のN700S系に乗るときは、500系のぞみを思いながら乗る事としたい。
500系が残したもの

500系のぞみが果たした最高速度300キロ走行、東京~博多間5時間切りは、後継のN700系・N700S系が現在も無事に果たしている。
500系が残したのぞみの速度向上・サービス向上の精神は、よりブラッシュアップされ今も生き続ける事であろう。
500系こだまが残した、エンタメとしての新幹線は、700系E編成の内の3編成が、人気漫画・アニメの「ONE PIACE」とコラボした「ワンピース新幹線」として走り、中国地方の観光促進にも役立っている事であろう。
最後に
500系のぞみと並ぶ、JR西日本が誇るもう一つのレジェンド「寝台特急トワイライトエクスプレス」の上り大阪行きラストラン、終着の大阪駅到着時のアナウンスで「トワイライトは、私たちの心の中を、いつまでも、いつまでも走り続けます。」と流れたことは、一部の方はご存じであろう。
それと同じく500系新幹線は…500系のぞみは、私たちの心の中を永遠に走り続ける。
さよなら500系よ。ありがとう500系のぞみよ。本当にありがとう500系のぞみよ。これからも永遠に500系!
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2020年3月のダイヤ改正を以て700系B編成・C編成は引退。
東海道・山陽新幹線系統の16両編成は全て300キロ新幹線に統一され、300キロ新幹線が改めて当たり前になったものだと個人的には感じている。